処理水はなぜ「飲める」のか

雑記

※アフィリエイト広告を利用しています

福島第一原発の処理水放出がスタートしました。これで原発廃炉がようやく進むかーと思ったけど、想像よりも反対の声が多い。

なのでここでは、処理水について科学知識がない人でも分かるように解説していきます。

この記事を読むと分かること

  • 処理水ってそもそも何?
  • 放射線ってどういうもの?
  • なぜ放射線が人体に影響するの?
  • 処理水、海洋放出して本当に大丈夫?
  • 他の国はどうやって処理しているの?

参考文献

  • 書籍「放射線を科学的に理解する 基礎からわかる東大教養の講義」
  • 経産省HP「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと」https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps.html
  • 東電HP「廃炉プロジェクト/福島への責任」https://www.tepco.co.jp/decommission/

なぜ処理水が発生したか

まずはいろんな前提から。知っているところは読み飛ばしてください。

原子力発電とは、核分裂反応のエネルギーを使う

原子力発電とは、「核分裂反応」という反応によって得られるエネルギーを利用するものです。

とにかく、その「核分裂反応」によって膨大なエネルギーが得られる。そしてそのエネルギーは熱として取り出され、その熱は水を熱する。そうすると水は蒸気になってタービンを回し、そこで発電が起きる。という仕組みです。

核分裂反応とは、原子核が分裂することです。原発の燃料になるウランで、その反応がおきます。

ウランに限らず、どんな原子にも中心に原子核というものがあります。原子の中心である原子核に中性子がぶつかると、原子核が2つに分裂します。これによって、膨大なエネルギーが生まれます。そしてこの反応は一つ起こると連鎖します。

原発事故とは、津波で機能不全になった原発が水素爆発した

原発事故についても復習。2011年3月の東日本大震災で、福島第一原発は大津波に襲われました。津波によって原子炉の運転・制御に必要なものが機能しなくなり、結果的に「水素爆発」が発生。つまり大爆発です。原発内にあった大量の放射性物質が環境に放出されました。事故発生のプロセスはもっと複雑ですが、ここでは割愛。

処理水とは、放射線を含む汚染水を浄化したもの

では話題になっている処理水とはなんでしょう。処理水とは、「汚染水」を色々やって浄化したものです。一部メディアでは、
汚染水は原発事故で発生したもので、高濃度の放射性物質を含んでいます。「燃料デブリ(原発の燃料が一度溶けて、冷えて固まったもの)」を冷やすための水が、燃料デブリに触れて汚染水になります。さらに、地下水や雨水も汚染水に触れると、新たな汚染水になります。こうして汚染水は増え続け、汚染水を浄化した処理水も増え続けています。

原発の廃炉のために処理水の海洋放出が必要

前提として、福島第一原発はこれから廃炉に向かいます。廃炉の作業をするためには、現時点で原発に残っているやばいやつら(燃料デブリや使用済み燃料)などを取り除いていく必要があります。取り除いたやばいやつらを置いたり処理するためには当然場所が必要で、新しい施設の建設が必要です。処理水は今も増え続けており、処理水を貯蔵するタンクが大量に必要です。よって、廃炉作業のためには処理水を減らす必要があるのです。

次に、放射線とはそもそもなんなのか、どうして人体に影響するのかを説明します。

放射線はエネルギーを持って人体を通過する。すると、いろいろ壊れる

放射線は高いエネルギーを持って空気中を飛ぶもの

放射線とは、高いエネルギーを持って空気中を飛んでいる粒子または光のことをいう。この空気中を飛ぶ中で、人体など物質に当たると、その中の原子とぶつかって色々なことが起きる。具体的には、物質に吸収されたり、減速したり、どっかに飛んでいったり。
そうやって物質に当たる過程で、放射線は徐々に運動エネルギーを失います。運動エネルギーっていうのは動くために必要なエネルギーのことで、運動エネルギーを失うと放射線は止まります。
たとえば野球のピッチャーが投げたボール。あれは運動エネルギーがでかい。だからぶつかると痛いし、怪我したりする。けど、永遠に進み続けるってことはなくていつか止まりますね。放射線もこんな感じのイメージです。

放射線は動いているから影響する

放射線は、運動エネルギーを持って動いているからいろんな影響を与えますが、逆にいうと止まってしまうとなんの影響も与えません。だから、放射線を浴びた人に近づいて放射線がうつるということはありえない。ここはよく誤解されるところ。

放射線は、大谷が投げる野球ボールみたいなものです。バッターと大谷の間に、なんでもいいので何か置かれていたとしたら、その物質は粉々になるでしょう。そんなイメージ。

そこに置かれていたものが、人の遺伝子でも当然壊れます。遺伝子は細胞の中にあって、たくさんの細胞で人の体はできてます。ですが、遺伝子は壊れて終わりではありません。遺伝子には治す力があります。なので多少の損傷は大丈夫。でも損傷が大きくて治しきれなかったり、治すのに失敗するとがん細胞になったりします。

ちょっと細かい話ですが、ここで注意したいのが、放射線と放射性物質は違う、ということ。

処理水に含まれるトリチウムは放射線ではなく放射性物質

放射性物質とは、放射線を出すもののことです。この放射性物質が体の中に入ると、体の中から放射線を浴びます。これが内部被曝と呼ばれるものです。外にある放射性物質から放射線を浴びるのは、外部被曝と呼びます。処理水に含まれるトリチウムは放射性物質で、放射線を出しています。

放射線は自然界、人体どこにでも存在する

放射線は、原発事故に関わらず、はるか昔からどこにでも身の回りに存在しています。これは土の中、私たちの体の中には天然の放射線物質があるからです。性格には放射性核種ですが、放射性物質という理解でOK。また、宇宙からは常に宇宙線が降り注いでおり、これも放射線です。

宇宙から降り注ぐ宇宙線から被爆する放射線の量は、1人あたり年間0.39ミリシーベルトです。このミリシーベルトとは、放射線量の単位のことで、ニュースなのでもよく聞きますね。シーベルトの1000分の1をミリシーベルト、ミリシーベルトのさらに1000分の1をマイクロシーベルトといいます。

普通に生きているだけで、宇宙から0.39ミリシーベルト、大地からは0.48ミリシーベルト、食物から0.29ミリシーベルトの放射線を浴びているといわれています(年間の1人あたり放射量、世界平均)。胃のX線診断一回でも0.6ミリシーベルトの放射線量です。

でも私たちは健康で生き続けています。宇宙からふり注ぐ放射線を避けるため外出しないなんて人はいないし、地面からくる放射線量をいちいち気にしないでしょう。それは、通常生活しているだけだと一度に浴びる放射線量がきわめて微量で、仮に遺伝子が壊れたとしてもすぐ治るからです。この修復機能があることはすでに述べました。

一度に大量の放射線を浴びる場合、広島・長崎の原爆爆心地にいた方々は、一度に大量の放射線を浴びました。実際にはやけどで亡くなった方が多いようですが。高い線量の放射線を集中して浴びると、修復などの機能が間に合わず、人体への影響は大きくなります。

ですが、長期的に微量の放射線を浴びる分には、普段わたしたちが当たり前のように放射線を浴びて生きているように、あまり問題になることはありません。

【結論】処理水は安全

トリチウムから出るエネルギーは非常に弱い

処理水とは、放射性物質を含む汚染水を色々やって浄化したものといいました。処理水にはいくつかの放射性物質がありますが、トリチウム以外の物質についてはこの時点で安全基準を満たしています。

トリチウムとは、放射線を出す、いわゆる「放射性物質」のひとつです。トリチウムから出る放射線のエネルギーは非常に弱いです。紙1枚を通過することもできません。

トリチウムは水道水や雨水にもあり、世界中の原発から放出されている

トリチウムは自然界にも存在していて、すでに私たちの体の中にもあるし、水道水や雨水にも存在しています。そしてトリチウムは、世界中の原子力施設から今も海に放出されています。その被害は現時点で見つかっていません。

トリチウムは放水前に海水で薄めて、安全基準を満たすようにします。この安全基準はWHO(世界保健機関)が定めた飲料水の基準をもとにしています。WHOが定めた「これくらいのトリチウムが入った水ならOK」の基準。その7分の1未満にして海洋放出しています。もっというと、「今回放出する水より多少高いトリチウムが多い水を飲んでも大丈夫」ってWHOが定めているともいえます。それがどうしても信じられない人は、WHOに入って自分でルールを変えましょう。

まとめ

処理水は、福島第一原発事故で発生した汚染水から数々の放射性物質を取り除いたもの。残った放射性物質トリチウムは、極めて影響が少なく、エネルギーが少ない。よって人体への影響は少なく、十分に薄めて海洋放出すれば安全。

個人的に、この記事を書いている途中で「あれ?東電とか経産省のホームページ見たら十分じゃない?」と思った。でももう結構な分量書いていたので書くしかなかった。

これだけネット上にも知識があふれているのに、それでも危険だ反対だと騙る人はろくでもない。と個人的には思います。

この記事を書いた人
社会人獣医学生ぽこぽこ

社会人から獣医学部に合格した30代。
獣医師目指して勉強中です。

受験を考えて不安な方、知りたい情報がある方にとって有益な情報を発信できるよう、このサイトを作りました。
勉強法、受験にかかった費用、共通テストに関する情報など、僕の体験談を踏まえてお伝えします。

自分が社会人で大学受験した時「こんなサイトがあったら良かったなー」と思えるサイト作りを心がけています。

共同執筆者は友達のエイトマン。
彼は元国語教師です。

趣味は英語学習、映画鑑賞、マンガ。
徒然なるままに、心に移りゆくよしなしごとを記していきます。

社会人獣医学生ぽこぽこをフォローする
雑記
社会人獣医学生ぽこぽこをフォローする
獣医学生ぽこぽこ

コメント

タイトルとURLをコピーしました